ここではなかなか止まらない「しゃっくり」に漢方が有効であることを実例をあげて説明しています。
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しゃっくりと漢方 |
「しゃっくり」は漢方では古くは「やく逆」、現代では「吃逆:きつぎゃく」と書きます。どうして「しゃっくり」くらいでこの記事に書くのだろうと思われるかもしれません。それには理由があります。現実に「しゃっくり」が止まらないでお困りの方が結構いらっしゃるのです。 病院、お医者さんからの紹介で「しゃっくり」によい漢方薬を合わせてもらいなさいと来られた患者さんは過去に数人おられます。またお医者様も、「しゃっくり」には民間療法で柿のへた(生薬名、柿蔕:シテイ)が良いからとご存知で、患者さんに教えて指名で買いにこられる方も多くおられます。 実際大抵の場合、止まらなかった「しゃっくり」が即日止まる事がほとんどです。なかにはこれでだめな場合がありますが、その際には漢方処方を調剤してお出しいたします。 さてこの単純な「しゃっくり」ですが、なんらかの原因で横隔膜が痙攣し、息の出入りの際に特有の音が出るものです。その原因が実に多くあります。横隔膜の痙攣を起こす何らかの原因を西洋医学的にいうと、胃腸神経症、胃炎、胃拡張、肝硬変末期、脳血管疾患、尿毒症、あるいはその他に私の所で多いのは『がん』によるものです。 多くは胃がん、肝硬変や肝臓がんの末期に見られました。幸いにもなんとか「しゃっくり」そのものは、一応今のところ全員改善したという記憶がありますが、「がん」や肝硬変などの予後は残念ながらよくありません。中国の本には、次のように書かれていました。 『一部の危険な容態にある患者(末期)に併発するえつ逆は、元気衰敗、あるいは胃気が絶えようとする徴候である、したがって難治の部類に属し、その予後は良くない』 (上海科学技術出版:実用中医内科学より抜粋) 危険な徴候の「しゃっくり」以外は、ほとんど胃の問題が多く、飲食の不摂生、早食い、冷飲食の過多が原因の場合が多いです。冷飲食の場合は漢方的にいえば寒症になります。寒気が胃を障害して、その胃気が上逆して横隔膜を動かします。場合によっては、医薬品の中でもおなかを冷やす性質の物の影響もあります。 辛い物、熱い脂っこい物の場合は胃火の上逆ですので、治療薬も随分違います。 ただの「しゃっくり」ですが、軽いものは自然に発作が起こって自然に止み、重症のものは綿々と続いてなかなか治癒しない。特になかなか治らないものは注意が必要です。 2003年7月分 目次に戻る 漢方相談カードへ 参考:上海科学技術出版:実用中医内科学、中医症状鑑別診断学(燎原出版:中医診断と治療)、 大塚敬節:症候による漢方治療の実際 |
しゃっくりと漢方(珍しい実例) |
実例は、たくさんあるのですが一回で終わったりもするので、相談カードを引っ張りだせないのが多いです。記憶に残っていて最近のものを出してみます。 さきに上に書きましたように私の所に来られるのは、本当に止まらない「しゃっくり」の方ですね。 Aさんはご高齢者で70代の方です。 以下はご家族の人から得られた情報です。 ご相談時には、すでに2年間しゃっくりが続いている。もちろん毎日続いているのではありません。大体4日間しゃくりが続き、1週間ほどの間隔で休息がある。 このAさんには、持病として何種類かの病名を持っていました。治療済みとはいえご相談の3ヶ月前に胸腺腫の切除もされていました。 またこの人は柿のへたがしゃっくりに効果があるのをご存知で、お茶として煎じてお飲みになっておられましたが、残念ながら全く効果がありませんでした。 また最初のご相談で、あまり詳しい情報がなかったので、胃の冷えが疑わしいことからお出しした漢方薬(一週間分)はほとんど効果らしいものは感じられませんでした。 この方のしゃっくりの特徴は、「しゃっくり」そのものに便臭があるというところです。 普通では考えられません。ただの胃気上逆ではなさそうです。胃の中の消化が悪く物が臭うことがあります。が、ここでは大便臭ということです。 特徴を列記すると下のようになります。 ●4日間しゃっくりが続き、1週間ほど止まる。 ●しゃっくりで出てくる「息」に大便臭がある。 ●病院のお医者さんからは、大腸の一部分が巻いたようになり、ファイバースコープも通らない状態。疑似腸閉塞と言われた。(これはのちに話をうかがった。) このため、病院からは「大建中湯」という処方の漢方薬を出されて服用していた。 この大建中湯がのちほど副作用をあらわすことになります。 最近非常に多く使用されている処方ですが、おそらく今後副作用問題が出てくるのではと思っています。 ●大便がほとんどきちんと出ないので、時々コロンとしたものが少量づつ出るのを待っている状態。 大便の状態を見ればわかりますが、病院の方では、便秘に対しては対処していません。(2004年11月現在、今月もどこかの病院で、腸閉塞の女性患者さんが、検査のための下剤投与により、腸管破裂で死亡するという事故がありました。) 腸閉塞に下剤というのは、当然禁忌(きんき:避けるべきこと)なので、処置していません。しかし、どうもこれが便臭のあるしゃっくりの原因になっていることは考えられます。 完全な腸閉塞でもなく、数日経つとコロンとした大便が出るところをみると、まだ通路としての腸の働きはあると考えました。 病院では、カマグ(酸化マグネシウム)のような塩類下剤も使用していない状態でしたので、何とかまず大便を柔らかくすることを考えました。下剤を使って出すのではなく、腸内を潤して便を出やすくすること。 お年寄りには、センナや大黄剤などの腸を動かして排便を促す薬だけでなく、年齢とともに不足してくる身体の血液成分、体液成分などを補うこともまず考えなければなりません。 そういうことで処方は(今回は書きますが)「潤腸湯」を選択し、下剤成分を極力少なくし、とにかく最初は便を柔らかくなるようにする目的で、ご家族の型に協力してもらい煎じ薬で服用してもらいました。(徐々に大黄を増やしていってもらって柔らかい便が出るまで調整してもらいました。) そうしますと、大便がだんだんと出るようになりました。 恐れていた腸管の破裂はなくホッといたしました。 そして、それとともに、大便臭は減り、そして次第になくなっていきました。 しゃっくりは、大体9日間止まり、3日くらいしゃっくりをするというくらいに改善しました。 しかし完全に治る事はありませんでした。(これさえ改善と言えるかどうか・・・とにかくお客様には喜んでいただいたので、そういうことにします) 便通の改善としゃっくりの若干の改善が見られました。 途中、腹部のガスが原因と思われるしゃっくりの悪化がみられたので、一処方を加え一日交代に服用してもらい、「おなら」もよく出るようになりました。 しゃっくりは時に強く、命の危険さえ感じるものもあったと聞きました。 のちに腫瘍が見つかったという報告とともに、その後音沙汰がなくなりました。 2004年11月書き下ろし(11月23日修正済み) 目次に戻る 漢方相談カードへ |
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