気管支喘息と漢方 |
気管支喘息(気管支ぜんそく) 気管支ぜんそくは、内因性と外因性にわけることができます。 内因性ぜんそくは、慢性気管支炎などがもとになっているものが大部分のようです。 慢性気管支炎の事に少しふれておくと、かぜの後がこじれて、急性気管支炎から慢性へと移行するものもあるし、近年では環境汚染によるものも増加している傾向にあるようです。 さてぜんそくの症状は、ぜーぜー、ひゅーひゅーといった喘鳴(ぜんめい)をともなう発作性の呼吸困難を起こすものです。朝夕の気温変化、気候の変化、肉体的疲労や精神的葛藤(ストレス)などによって発作が引き起こされる事があります。その時に咳やたんがでることも多くあります。 わずかな喘鳴をともなうだけの軽症のものもありますが、重症になると、寝ていることができず、座って前かがみの姿勢をとってかろうじて呼吸するようになります。このような症状が長く続くと、適切な治療を行わないと非常に危険な状態になってしまいます。 外因性ぜんそくは、吸入物や食物などを抗原とするアレルギー性疾患ですね。 漢方からみると、気管支ぜんそくは一つの原因に基づいた独立疾患ではないと思います。 たとえば(昔からある日本風の漢方の考え方ですが、分かりやすい) ◎水毒…不要物質が体内にたまるために体液が変化し、身体に変調をきたす状態 ◎食毒…食物の消化・吸収・排泄が不調になって、便が腸内にのこる結果、肝臓や胃腸に負担が増加している状態 ◎お血…更年期障害、痔、打撲、手術などで血液の循環障害のある状態 その他の原因も考えられます。 小児に多いぜんそく性気管支炎は、ぜんそくに似た発作を起こす慢性気管支炎で、その症状は咳やたんがでて、発作性の呼吸困難を伴うものです。 ぜんそくを治すには、治療以外に食事と日常の生活態度が肝腎ですね。 ※肉食と甘い物のとりすぎ、偏食と過食に注意すること。 ※水毒体質の人は果物、コーヒーやお茶類などの水分、特に冷たい物を極力避ける ※精神的安定を得るような家庭内での規則正しい生活を心がけること。 などが大切です。 慢性気管支炎やぜんそくを治療する漢方の処方は非常にたくさんありますが、もっとも適するものを選びだすのはそう簡単ではないので、漢方の専門の研究者と根気よく相談して、体質の改善をはかるよう努力してください。 当薬局においても相談に応じます。お気軽にお立ち寄り下さい。 目次に戻る 漢方相談カードへ |
気管支喘息と漢方A実例 |
気管支ぜんそくと漢方の実例 今回は気管支ぜんそくについてです。 漢方では、『内に壅塞の気あり、外に非時の感あり、膈に膠固の痰あり、三者相合し、気道を閉拒し、搏撃して声あり』とし、胸中にある痰が気道をふさぎ、なんらかの外からの要因によって発作が誘発されることを指摘しています。 まずは発作時と寛解期とに別けて考えます。 ◎寒飲阻肺…寒冷の気候、冷飲食、風邪引き、疲労などで発作が誘発される ◎痰熱阻肺…熱病、慢性病などで体液が消耗されて痰が発生、あるいは味の濃い油っぽいものなどの食べすぎによって生じた内熱や、精神的ストレスによる内熱により生じた痰が原因とする発作。 ◎痰気交阻…気の流れの異常と痰が原因とする。精神的ストレス、緊張、疲労、風邪引き、気温の変動などで誘発 寛解期は発作の基本になる『膠固の痰』を排除すると同時に、痰を産生する根本的な原因を改善することで、次の発作を軽くしたり、ついには発作を生じないようにする、体質改善の重要な期間です。 ★実例 中年の男性A氏はヒューヒューゼーゼーという喘鳴と共に咳も多いタイプ。朝夕に多く、痰は泡のようだが、普段はでない。咳の時に鼻水がでる。咽の乾きがあり、冷たい物が欲しく、温かいものがきらい。 舌の状態は肉質赤みが強く、舌苔は白く中程に薄くついている。最初『痰熱』が中心の漢方薬(粉薬)をお出しして、何となく良いという状態が2・3ヵ月続いていましたが、この何となくが気にかかるので、もう一度問診して今度は煎じ薬で処方内容も変更しました。 しかし意に反して効果なし。さらに問診して『咳込むと痰を吐いた』という情報を得た、しかもネロネロと粘っこい痰がそれこそたくさん出たと言う。これで考え直して、最初の処方に寛解期に使用する痰を処理する漢方薬を足してみたら、これが最も相性が良く、これをのんでいる限り発作が出ないで仕事が出来ると喜ばれている。 このA氏の場合、発作期、寛解期の区別明らかでなく、毎日が苦しい日々であったそうです。この相性のよい処方構成にいたるまで、この方の場合4回処方の見直しをしています。なかなか体質の把握は難しく、患者さんも私も根気のいる事です。 なお上記『寒飲阻肺』の喘息タイプの人は、病院などで指導している内容で「痰を出しやすくするために水分を多く取るといい」とよくいわれるのは逆で、ますます痰が多くなって悪化いたします。 もともとこのタイプの人は痰は多いのですが、薄く、つばのような痰で切れはそれほど悪くありません。くだもの、冷飲食、生野菜、水分の過多に注意です。 追加: 2003年になってから、偶然この患者さんに薬局前でお会いしました。その時にはすでに漢方薬は廃薬(お薬を飲むのをやめる事)しておられました。奥様のご病気が悪く進行しておられ、自分の時間が十分に取れなくなってお止めになっていたそうです。 ぜんそくの方は、漢方薬を止めてからも、治っているそうです。長年のぜんそくが治ったという良い結果でした。 1999年年1月分 目次に戻る 漢方相談カードへ |
アトピー性皮膚炎から喘息への移行の実例 |
この患者さんは、当時まだ学生で、本当に若い元気な青年といえる方でした。 十代前半にアトピー性皮膚炎を発症し、大阪の漢方治療で有名な某病院に通っておりました。 その病院では煎じ薬ではなく、エキス顆粒2種類と軟膏2種類を使用していました。また並行して薬局で購入した健康食品(霊芝)を摂取していました。2年程治療に通いましたが、いま一つ変化が見られないというところで、当薬局にご相談がありました。 漢方薬の煎じ薬をなんども変更しながら、それこそかなり苦心しながら、漢方治療のお手伝いをさせていただきました。3ヶ月目くらいでやっと赤みが減ってきて、何とか落ち着きを見せました。なんとか人目を気にしなくて良いくらいに日常生活を送れるようになってきた所、約2年後ですが、突然喘息発作を起こしました。 こちらが驚いてしまいました。 アトピー性皮膚炎の方は、夏は皮膚炎、冬は喘息という人がよくいたものなんですが、急に移行したように喘息が起こりました。 病気の原因となっていた、皮膚、肌肉の熱が肺に入ってしまったようでした。 その頃には仕事についておられたので、たぶんに仕事上のストレスが関係あると思われました。病院での気管支拡張の吸入薬や内服薬と併用しながら、今度は喘息の改善に望みました。喘息がある程度、落ち着くと、皮膚のカサツキが気になるようなので、なんどもこれも処方の変更や処方同士を合わせたりしながら、何とか落ち着くようになりました。 でも正直、完治にはなっておりません。やはり、複合原因と考えられるアトピーは完全治癒というのが難しいという一例でもあります。 やはり、仕事に就いた事が、大きなストレスになっているのだと考えられます。 本人もよく頑張っておられると思います。 2004年2月書き下ろし 目次に戻る 漢方相談カードへ |
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